ちいさい秋

 どこからかキンモクセイのかおりが感じられるこの時期になると、秋がいよいよ深まってきたことを思います。
今年も猛暑のため秋の入り口がなかなか感じられませんでしたが、この頃のように肌寒さを感じるようになると、思い出される歌があります。
それは「ちいさい秋みつけた」です。
 この歌は詩人であるサトウハチローさんが、文京区にある自宅の庭にある「はぜの木」の紅葉を見てつくったそうです。その三番の歌詞の中に「はぜのは あかくて いりひいろ」という箇所があります。この「いりひいろ」が気になり調べてみましたがそういうことばは見つかりませんでした。そこで「入り日」で調べると『西に沈もうとする夕日。落日。「燃えるような―」』と出てきました。当時サトウハチローさんは、自宅で見たあまりにも見事なはぜの葉の色に心動かされ、この詩が誕生したのでしょう。
 そうなると、この歌ができるきっかけとなったその色をぜひ見てみたいという気持ちにもなってきます。実は彼の自宅にあった「はぜの木」は後楽園近くの礫川公園(れきせんこうえん)に移植されていて、今でも実物を見ることができるのだそうです。
 11月が始まります。この素敵な季節をぜひご家族で感じ、楽しんでいただきたいと思います。そして、サトウハチローさんが見た燃えるような「いりひいろ」に色づいた「はぜの木」を訪れて、「ちいさい秋」ににひたってみるのもいいかもしれません。

園長 田村 一秋
(2024年11月「なかよし」巻頭言)